ビジネス通訳|日英中(台湾)逐次通訳:食文化・食材
昨年末に珈琲栽培のフィールドワークを沖縄で行なった際に「現地栽培」と称して出されたコーヒーの中では、農家自身によるものではなく焙煎士がローストした商品(だからか)である「名護珈琲」がもっとも美味しかったのです。
しかも、それは豆を購入して 2週間経とうとしていた時点で泊まっていた民宿で開封して限られた道具や環境の中で自分が淹れたものにも関わらずです。
日本人が好むような癖なく飲みやすく酸味も苦味もバランスのいい味でした。しかも冷めても美味しかったです。
が、実はこの「名護珈琲」にまつわる色んな話で、新しい産業が形成されていく上でどこでも回避できない現象を知りました。
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日英・日中・英中通訳:沖縄産珈琲の道のり |
「名護珈琲」はもともと 10年以上前にいち早く珈琲農家として農業生産法人の認可を取れた背景を持ち、沖縄珈琲生産のパイアニアの一人でもあります。この方は京都の方で沖縄に来て珈琲栽培に手をかけられ、その情熱を周りの人たちにも共有されていたそうです。同じように沖縄で珈琲栽培するように多くの方に伝道活動されていた美談もネット上に投稿されています。
同じ時期においてはもちろん「名護珈琲」の他にも生産者がいて、そして生産者たちによって組合みたいな会もちろん自然に出来上がりました。ただ、早期の生産者たちの多くは純粋に珈琲好きだけというわけではない方々も多数いらっしゃるようで当時挙げられてた「国内産珈琲の希少価値と市場需要の高さ」、いわゆる「金儲け(潤い)のポテンシャル」に動かされた方々も少なからずいらっしゃったのです。
また当時はまだ今ほど食品・食材の表示に対する取締の厳しさはなかったからか、理解は足りなかったからか「沖縄産」の豆と表示して高く売っているものは県内に出回っていたのですが、実際には沖縄どころか、日本産ですらない豆の方が多く占めていました(日本産といっても国内の北限は沖縄など何箇所しかないので・・・)。
いわゆる「偽造沖縄産珈琲(豆)」が出回っていたわけです。
農業をやっている方ならばご存知だと思いますが、人間と同様に植物は若いうち安定した生産量を出せなくて、最初の収穫をしてから安定期に入るまではまだ時間が要ります。さらに、もともと生産地「外」とされている気候や土地ならば、なおさら通常の収穫量を望めないことは多々あります。
しかし、名前が先に売れた、市場需要の方が先にたった、いい商売チャンスだ、などなど色んな要素の中で、珈琲だけではなくお酒の業界なども同じような「偽造商品」の現象が自然におこってしまいます。
これはもはや新しい産業の初期成長段階で避けずに通れない道だと言っても過言ではありません。現に珈琲栽培において沖縄より10年先に進んでいると言われている台湾もかつて同じことが起こりました。しかも、組合が率先して。その産地はいまだに組合が原因で発展が止まっているような状態だと言われています。
沖縄の場合は「名護珈琲」の創立者はそのこともあって現地で生産者たちの間で相当の不信感を抱かれて悪名を被っているようですが、「名護珈琲」の経営陣の中でも揉め事があるようです。上述した京都の方は現地で沖縄の方と手を組んで合同経営されているそうですが、不仲になり現在基本年 1 回しか店舗に顔を出されていないようです(現在「名護珈琲」の店舗に常時いるのは雇われた女性焙煎士一人のみです)。
組合の方は 1代目に続き、2代目の会長に変わった時点でこれまで溜まってきた膿やその他複数的な要素などもあったからか、組織内で意見が別れ、不平不満が爆発して、一度分裂されたそうです。その時点でだいぶ会員が減り、別の組織(新しい協会)をたてられました。
それによって嫌気にさした人は多く出たみたいです。組織に対する不信感も。現在は真剣にやっている人たちは個々で黙々と努力して交流も各自で交わされている様子で、組織などに対しては一定の距離を置くような姿勢は多いようにお見受けしています。
今の時代は同じ志を持った同士ならば、国境や言語などに阻まれることもなく繋いでしまうのです。その方が健全かもしれません。ただ「産業」と言う視点からもどうしても組合や協会などの公の「組織」も必要で、個々では国の行政や民間大手と交渉や訴えづらいことがあっても組合や協会としてなら強くなります。
一方、組合も協会も自分自身が会員と同じ立場や視点を持った上の代表でないと機能しません。農業ならば早い話、自分自身が同じ条件や目的で珈琲生産者を実践しているということです。特に「目的」が重要で、人間はそれぞれ異なる個体なので一緒にすることは不可能ですが、同じ「ビジョン」を共有することで初めてそれぞれの個体の役割が活かされていきます。
「偽造沖縄産珈琲(豆)」が県内で露出されておかげで、今は、もうほとんど「偽沖縄産コーヒー」がなくなったと言われています。「名護珈琲」の表記も「沖縄産」ではなくなり(でも「日本」と書いてあります。笑。)以前と違って空港やネット販売からも入手できなくなりました(実際、沖縄産ならばそんな大量提供できるほどの収穫ないはずですからね)。
現在「名護珈琲」を求めるならば、沖縄現地の店舗に行って買うしかありません。しかも、数量はそれほど多く置かれていません。私は自分が民宿で淹れた、あの冷めても美味しい珈琲は「偽造沖縄産珈琲(豆)」ではなく本物の沖縄産であることを願ってやみません。
本当に美味しかったですから。
[店名]:名護珈琲
[住所]:沖縄県那覇市古波蔵 2丁目 9-24
[営業時間]10 〜 17時・土日祝休
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