ビジネス通訳|日英中トリリンガル:会議・交流・経営・戦略
約 20年前に某大手教材・教室運営企業の本社広報部で日英・英日の翻訳者兼エディターに勤めていた時期がありました。
日本企業ですが全世界規模にあり、当時はすでに 50年以上の実績を積み上げて来られたような老舗ですが、私が契約社員として入社させていただいた際はちょうど取締社長がお亡くなり世帯交代、いわゆる組織の生まれ変われるタイミングでした。
それまでの会社は創立者一家によって営まれてきたもので、ファミリービジネスという経営実態でしたが、社長がお亡くなる直前で指名した新たな取締役は他業界(教育と無関係)からの方で、社長のご友人でした。
おそらく亡くなられた社長は、これからの時代に向かって新しいやり方や視点が必要だと思われたのでしょう。教育と関係ない業界で経済や組織に詳しいご友人を新たな取締役として迎えた同時に会長を含め創立者の一族をあくまでも裏舞台のポジションに回されました。
このような世帯交代は、創立してからファミリーが経営陣として 2代目、3代目などを迎えたりする企業にとってはよくある話で、切り替わる過程に起こる現象(課題)も共通点が多いように見えます。
一つは創立者の初心(理念)に対する理解の角度や温度差のギャップで、もう一つは新しく導入する組織構成や運営方法がなかなかそれまでの土台(企業風土・文化)と噛み合わない、ところです。
ファミリービジネスによって運営されていた頃はよくも悪くも、創立者の初心(理念)が強く反映され、社員や役員たちに同じくらいの目線や深みで共感を持たされています。が、部外者(特に関係ない業界)が新たにトップに立たれた場合は、その初心(理念)が大事にされていないという社員たちの不満の声が上がります。特に創立時代から共に歩んできた古株の社員からは苦情や反発がよく出ます。
さらに、古い体制から一気に脱出させたいからか、ファミリーである一族が現場と経営に一切関わらないように遠ざける方針がほとんどで、まるで過去を否定するような印象を映し出してしまいます。これも社員が団結させづらくなる一因になります。
もう一つの課題である新しい社長による新たな組織構成と運営方法や体制ですが、やはり先代が築き上げた土台(企業風土・文化)をうまく反映して導入されないケースの方が多く、これもギクシャク(社員のモチベーションや士気、ビジョンの共用)が生じたり、企業メッセージの乱れにつないだりする一つの原因です。
新旧が入れ替わる時期は混乱を避けられないのですが、うまく転換できるケースは大抵 1年経てばなんとか過去と現在をつなぐ道筋が見えてそのビジョンが全社、そして顧客に共有されるようになっていきます。一方、部外者で新たに社長やトップに立たれた方々の偏りが目立ち、それまで組織の土台(魂)とうまく融合できない場合だと、面白いことに社内外ともたくさんの「この会社だけのルール」「この会社だけの表現」「この会社だけの価値観(理念)」が溢れてきます。
特徴としてはこれらの「ルール・表現・価値観(理念)」は、業界と関係なく、顧客や社員にも共鳴されないものが多く、ひたすら洗脳みたいに社内で繰り返され、そして社外においてはまるで押し付けるくらいの姿勢で発信するのです。
広報部で英語の翻訳・通訳する際もこれらの独特な理念に基づき、特殊の用語(社内造語)を言葉の変換にしなければなりません。しかし、誰でも聞いたら読んだら伝わる、しっくりくるような文面を作らなければ良い仕事したとは言えません。もっと言えば社内広報部なので、それまでの企業イメージを変に裏切るようなメッセージだけになってはいけない注意も必要でした。これは一番の難点だったかもしれません。何故ならば、空っぽのメッセージほど通訳するのが難しいからです。
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