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珈琲栽培|沖縄:民間〜市町村〜県(下)

ビジネス通訳|日英中逐次通訳:珈琲栽培(沖縄)


昨年末に沖縄本島で行われた珈琲栽培に関する現地調査のまとめ(サマリー)の後半です。前回は民間の歴史、挫折の原因、メーカーや市場からの関心、そして産学官民の動きと大手メーカーの参入について背景的な部分を駆け足で書いてきました。今回はその先にある、現状と将来についてまとめてみたいと思います。

利益が先はしるその先

市場の要求や関心が集まる中、産学官民においてもそれに釣られて色々動きはありましたが、残念ながらどの業界もそうですが初期の頃はよくみられる三つのパターンで初期課題として現れました。

(1) 市場需要はあるが、製造上の問題をクリアできなく、偽造品が出回りそれによる噂やイメージダウン。

(3) さらに、初めて試みる農作物(生き物)なので安定した生産品質と量が達すまで10年かかるなど必ずしも市場の需要に応えられる訳ではなく、また市場価格やその他要素に一致できるとは限らない。

(2) 製造者や生産関係者を増やす段階で集まってくるメンバーは必ずしも珈琲が好きという訳でもなければ、植物を育てるのに興味あるとは限りません。「沖縄産珈琲と言えば高値で売れる!」がモチベーションになっていた人たちは「我が先に」や「我の利益を害される」という意識が先立ち、まだシェアを競い合えるような市場すらなっていない実験や暗中模索段階にも関わらず、ビジョンや情報共有できず、切磋琢磨もできなくなり、お互い足を引っ張り仲間割れる結末など。

実際に沖縄や台湾の珈琲栽培においても(台湾の酒造りも!)こういう現象が起こり、新しい産業はどうやら国や業界問わず、そういう道のりを踏まえて徐々に産業の土台や本物の品質を形成されていくもののようです。

行政の関心のなさ

これまで幾度も沖縄に「珈琲栽培」の波があったようですが、果たしてこれはどこまでのものかというと、残念がら産業と言えるレベルではありませんでした。生産規模はもちろんまだ試作段階のようにありますが、行政の目線からでも現在は県レベルどころか市町村でも注目されていません。

注目されるどころか、アジェンダにもあがってこないのは現実です。ただ、これもある種仕方ないことではあります。何故ならば、順番としてはまず市町村から声や情報があがってはじめて県がレビューして位置付けを決められる訳です。支援や政策の予算ももちろんそうです。

本来は各地域(特に過疎地)は地域再生や活性化するために自分の地域の新たな目玉農作物ないし話題を積極的に住民と一緒に模索して取り組んだりするはずですがどうも(少なくても沖縄本島では)そういうところであればあるほど役場にマニュアル通りだけでやり過ごしたい、意欲の少ない方は多いらしいです。実際、今沖縄北部で個人で運営している珈琲農園の中で農園にまつわる環境や設備、または土地道路問題に関してなかなか役場と話しがうまく進まない、協力を得られない事例もありました。

本来はこういう時こそ生産組合や協会が代表になって個々では相手にしてもらえないような交渉事や関係構築して色々推進していければいいですが、先ほど「利益が先はしるその先」にも書いてあるようにこれらの団体も仲間割れたり信用を失われたりして、または協会自体が栽培を直接に実践している訳ではないため、生産者や農家などの現場感覚からズレがあり、説得力も説得材料も今ひとつ足りず生産側から距離を置かれ、お互いの連携が薄かったりします。

そして市町村や県などの行政機関から見れば、基本成功事例や十分なデータ、もしくはマニュアル(デフォルトのやり方)などの確立がなければ、なかなか熱意を示して動けないものです。実は私は沖縄現地調査の初日に訪れたのは沖縄県庁でした。県レベルで現在県内の珈琲栽培についてどんな情報を持ち、理解や考えを示しているのか知りたかったからです。でも、現在新たに沖縄県を代表する農作物の候補として珈琲はあがっていません。県庁目線では可能性を感じられているのは、苺とバニラビーンズだそうです(私はいち消費者としては南国の苺はないが、バニラビーンズにはピンとくるものはありました)。

県庁がバニラビーンズを候補に挙げたのは、九州のバニラビーンズ栽培に成功の目処が見えてきたからだそうです。今は乾燥作業の部分に課題が残り、それをクリアすれば栽培の方程式が完成されるかもしれないので、そうしたら沖縄も同じものを導入して試せると(なんだか受身的な取り組み方で聞いている私は歯がゆい気持ちもありますが)おっしゃいました。

余談ですが、現在九州は私の大好物の牡蠣およびオリーブ事業が注目されていて、今後飛躍していきそうです。沖縄への機内誌にも掲載していました。さらに、コーヒーに関してはなんと、九州はハウス珈琲栽培という方向で色々動きを展開していくそうです。

個人の本気が将来を作る:初国内産スペシャルティコーヒー!

ここ10年、ちょうど 2011年東北震災の少し前からどんどん「本格的」コーヒー追求・愛好家が沖縄に現れて、珈琲を淹れたり焙煎したりさらに栽培したりする方々は増えました。職人のような熱〜い眼差しでコーヒーを取り組んでいます。

先ほど言っていた組合や協会などの争論のよそにこのように純粋にただ沖縄から良い珈琲を作りたいという人たちは個々に日々黙々の努力と試行錯誤を重ねているのです。もし今後「沖縄コーヒー」というブランドのようなものが世に出てきたら、きっとその土台を作ったのはこれら個々の人々だと私は思います。

今の時代だから個々の活動や情報交換、交流は昔よりずっと簡単に国境を超えられます。大きい組織を通さずとも。ここ数年、台湾と沖縄がコーヒーに通じてコラボイベントや色々交流を重ねています。沖縄現地の方に聞けば、台湾のコーヒー栽培は沖縄より 10年先に進んでいていとても参考になることは多くここ数年珈琲栽培の技法やコツなどにおいても教わったりすることは多いとのことでした。

副業・兼業・第六産業

現在沖縄県内で規模問わず何かの形でコーヒー栽培している方は、沖縄本島以外には石垣島、西表島、久米島、宮古島にいらっしゃいます。コーヒーは最初の収穫は4〜5年待つ必要はある上、安定した量の果実を生み出すような樹木になるまでは 10年くらいかかります(果樹の中では割と普通みたいです。アボカドなんて最初の収穫はその2倍くらい待たないといけないそうです)。

したがって、コーヒー栽培を実践している皆さんは本業が別にあるのです。その本業で得た収益をまだ実験段階か副業しかない規模の珈琲生産に回して中長期の投資や商品開発と同じ感覚で行っているのです。例えば別の農作物を本業にしたり、カフェや飲食店がメインだったり、宿泊施設の運営が中心だったりなどなどしています。

沖縄本島ではこれまで珈琲栽培といえば大半が北部に、その他は中部に畑がありました。しかしこの 4〜5年くらい、とうとう南部に有志者が現れ今年に最初の糸満産の珈琲豆でカッピングできたそうです。私も実は本島ならば北部や中部ではなく、南部の方が自分にしっくりくるものがあったので、このニュースは本当に嬉しく聞いて気持ちが高揚しました。

沖縄の地理気候環境などを考えるとどうしても王道の赤道にある珈琲生産王国のような中南米やアフリカのような大量生産のようなイメージは湧きません。そうすればやはり希少価値のものを出さなくてはなりません。

また、それ以外に現在沖縄で一つの方程式として考えられているのは「第六産業」としての珈琲事業の確立です。現在初歩的なのは珈琲観光農園としての考案ですが、結局コーヒーの実であるコーヒーチェリーの数が足りなければ、観光農園として成り立たないので、ようやく実施できるようになったのは 2018年頃ではないでしょうか。

私は昨年末に訪ねた農園のほとんどはそれをやっていました。コーヒーの木や栽培への認知度と理解を高めるにはいいし、出荷用でないチェリーが足りれば利益のマージンも良い方の事業なのですが、最終目的である出荷用のコーヒーの安定した成長や量に害さない程度にしないといけないので、まだ 10年目にもなっていない木でそれをやって大丈夫かという気もしました。どちらにせよ通常のコーヒー生産地じゃない土地ならではの難題が山積みある事業に違いありません。

情熱と覚悟がなければ事業として自分の農園が生み出す商品はどんなものかがというビジョンが見える 8年目や10年目までは続けられなくなるでしょう。敬意を表して、今それらに全力を注いでいる方々に脱帽致します。

コーヒー好きな方へ:ご参考に ]

沖縄の珈琲栽培(2020年記事まとめ)や 珈琲道具アレコレ(2020年記事まとめ)など、他のコーヒー関連記事やレポートの抄録を別途に note の「珈琲の棚」というマガジンに保管しております。宜しければどうぞ、そちらもお気軽にご参照ください。

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珈琲栽培|沖縄:民間〜市町村〜県(後半)

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Brenda Chen