ビジネス通訳|日英中逐次通訳:珈琲栽培(沖縄)
前回の「珈琲栽培|沖縄:土・水・虫・品種」では、現在沖縄のコーヒー農園は一本の木からの収穫量は海外農園の通常の半分と書いてありました。更に「農園環境と実態」の記事では適宜な条件を揃った農園があってもその特徴からして面積は従来の海外産地と比べ物にならないことが多いと記させていただきました。
では、沖縄で珈琲栽培を持続可能にするにはどうしたらいいかというと:
(1) 本業を別に持つこと(一時的・永久的)
(2) カフェや観光など第六産業の一部として運営すること
(3) GEISHA(ゲイシャ)のようなプレミアムで国際的に認められた希少価値と風味を持った品種やブランドの実現
(1) はすなわち安定した事業は別にあり、そこからの収益を元に珈琲栽培を持続させていく形態です。要するに副業・兼業です。何かの拍子で珈琲栽培が独立した事業として成立したらもちろん変更可能ですが、そうなれるか分かりません。
(2) 実は少し (1) が混ぜる部分もあります。特にまだ栽培規模と農園熟成度が浅い時期はカフェや観光事業を栽培と切り離して運営していることはよくあります。近年ようやく観光農園として「珈琲収穫・焙煎体験コース」ができるようになったところが増えましたが、それを実現するための道のりも課題だらけで大変でした。後ほど詳しく説明いたします。
(3) は長期的に珈琲栽培を沖縄県の代表事業の一つとして成立させたいならば、避けては通れない道だろうと思います。国際的にも認められた、独自のプレミアム品種やブランドが確立できたら、グローバル市場においても少量かつ高値での商売が成り立ちます。が、同時にこれは最も時間・工夫・技術を要する目標でもあります。特に「品種」となれば、ただ栽培すればいいのではなくて農業における品種製造や改良など、専門レベルの知識と技術を伴います。
今の沖縄珈琲栽培者たちの中で (1) と (2) を模索と実現しながら (3) を目指す本気な方は少なからずいます。ただただ珈琲が好きで美味しい珈琲を作りたい!という純粋の想いでいる方々は多いような気がします。
では (2) 観光農園の「珈琲収穫・焙煎体験コース」を実現するまでどんな困難があったかと言いますと、収穫したコーヒーの処理過程はもっとも大きい難関でした。収穫したコーヒーの処理法は色々ありますが、基本は:
(a) 皮と豆の分離(最初から分離しない手法もある)
(b) 豆の洗浄・乾燥・発酵(表面のヌルヌルを洗浄しない手法もある)
(c) 豆の脱穀・発酵
(d) 焙煎
以上のどの作業でも大変時間がかかり、半日どころか一日でも足りないくらいです。しかも個人のお客様対象にこれらの作業を少量の豆でも可能にする機材や道具はあるのか?という課題もありました。
そこで、あくまでも私が沖縄北部でお伺いした話ですが、一人変わり者のスタッフが役所にいました。その方とコーヒー生産者たちの試行錯誤によってようやく今の 3 〜 4時間体験コースが可能となったそうです。
コーヒーチェリー狩り自体は 1時間くらいまで、そこから下記の写真にもあるようにお客様に素手で皮と豆の分離をしていただく、これは 20 〜 30分ほどです。それを済ましたらザルで水流して軽く豆の表面のヌルヌルを洗い流します。これは 5分ほどです。

日英・日中・英中通訳|珈琲栽培:皮と豆の分離
洗浄が終われば、乾燥作業に移ります。発酵はもちろん体験コースには取り入れないが、本来この乾燥も大変な日数を要します。コースでは自然乾燥は到底できないので、大抵大きいな扇風機や写真のようにヘアドライヤーを使ってやります。もちろん、あくまでも表面だけの水分を乾かしているので、豆の中自体まで水分を完全に抜いたわけではありません。

随行通訳|珈琲栽培:コーヒー収穫・焙煎体験コース
乾燥が終われば、脱穀して焙煎します。日本には珈琲専用の小型脱穀機がないので、沖縄現地では現在家庭用の小型精米機などを使っています(TWIN BIRD やら IRIS OHYAMA やら色々メーカーあります)。

沖縄|珈琲収穫・焙煎体験:脱穀機の使用
もともと焙煎も炭焼きと同じように非常に時間と技術のいる深い世界だが、ここ体験コースでは「焙煎してすぐ飲む」という前提なので、とりあえずナッツを焼く感覚で 30 〜 40 分ほど焼いてコーヒーを淹れます。豆の中に水分がまだ残っているので、時間もないため深煎りはまず無理です。基本、浅煎り〜中煎りまでとなっています。

沖縄|焙煎体験:自分で収穫した豆を焼く
焼く道具も色々あるが、基本アウトドアや家庭用のコンロに上記の写真に写っている小さな鍋かフライパンに鉄網を蓋にして適宜に揺らしたり回したりしてなるだけ均等に熱が豆に行き渡るようにして焼きます。焦げやすいので本当に気をつけないといけません。弱火すぎると時間がかかりすぎだし、普段 BBQ や料理をしていない人にはちょっと難しいかもしれません。
沖縄では収穫したコーヒーチェリーを無駄なく全部使おうとするので、向いた皮を乾燥してお茶にしたりします。しかし注意すべきなのは、これは何も工夫せずにただ乾燥してお湯を淹れるだけだと正直あまり風味は良くありません。発酵やら加熱処理やら何かとひと手間を加える必要がある印象でした。

商談通訳|珈琲栽培:コーヒーチェリーの乾燥した皮がお茶に
こうやって沖縄は様々な工夫をして難題を乗り越えてようやく「コーヒー狩り」と「焙煎体験」ができる観光農園を実現してきました。この体験コースに特に興味を示したのは実は焙煎士だったそうです。おそらく焙煎士から見ると自分の世界で教わる作法・手法では考えにくいようなやり方なので、味が気になるのでしょうね。
一般的に焙煎士はコーヒーの木や生態、栽培のことをよく知らない方も多いので、目からウロコの体験に間違いありません。そしてプロの焙煎士や珈琲業界の関係者に限らず、コーヒーに興味がある方なら何方にも非常に勉強になります。
また、このとりたて、焼きたて、淹れたてのコーヒーは腕とは関係なく不味くなることはまずありません!もう、どこでどうやっても(焦げさえしなければ)美味しい!のです。コーヒーが苦手な方(女性が多い)は特にこれを機にコーヒーが飲めるようになったという話も伺いました。是非、一度トライして見てください。
[ コーヒー好きな方へ:ご参考に ]
沖縄の珈琲栽培(2020年記事まとめ)や 珈琲道具アレコレ(2020年記事まとめ)など、他のコーヒー関連記事やレポートの抄録を別途に note の「珈琲の棚」というマガジンに保管しております。宜しければどうぞ、そちらもお気軽にご参照ください。
〜 ・ 〜 ・ 〜
皆様からのお便りと良きご縁を心よりお待ちしております。
前回の「珈琲栽培|沖縄:土・水・虫・品種」では、現在沖縄のコーヒー農園は一本の木からの収穫量は海外農園の通常の半分と書いてありました。更に「農園環境と実態」の記事では適宜な条件を揃った農園があってもその特徴からして面積は従来の海外産地と比べ物にならないことが多いと記させていただきました。
では、沖縄で珈琲栽培を持続可能にするにはどうしたらいいかというと:
(1) 本業を別に持つこと(一時的・永久的)
(2) カフェや観光など第六産業の一部として運営すること
(3) GEISHA(ゲイシャ)のようなプレミアムで国際的に認められた希少価値と風味を持った品種やブランドの実現
(1) はすなわち安定した事業は別にあり、そこからの収益を元に珈琲栽培を持続させていく形態です。要するに副業・兼業です。何かの拍子で珈琲栽培が独立した事業として成立したらもちろん変更可能ですが、そうなれるか分かりません。
(2) 実は少し (1) が混ぜる部分もあります。特にまだ栽培規模と農園熟成度が浅い時期はカフェや観光事業を栽培と切り離して運営していることはよくあります。近年ようやく観光農園として「珈琲収穫・焙煎体験コース」ができるようになったところが増えましたが、それを実現するための道のりも課題だらけで大変でした。後ほど詳しく説明いたします。
(3) は長期的に珈琲栽培を沖縄県の代表事業の一つとして成立させたいならば、避けては通れない道だろうと思います。国際的にも認められた、独自のプレミアム品種やブランドが確立できたら、グローバル市場においても少量かつ高値での商売が成り立ちます。が、同時にこれは最も時間・工夫・技術を要する目標でもあります。特に「品種」となれば、ただ栽培すればいいのではなくて農業における品種製造や改良など、専門レベルの知識と技術を伴います。
今の沖縄珈琲栽培者たちの中で (1) と (2) を模索と実現しながら (3) を目指す本気な方は少なからずいます。ただただ珈琲が好きで美味しい珈琲を作りたい!という純粋の想いでいる方々は多いような気がします。
では (2) 観光農園の「珈琲収穫・焙煎体験コース」を実現するまでどんな困難があったかと言いますと、収穫したコーヒーの処理過程はもっとも大きい難関でした。収穫したコーヒーの処理法は色々ありますが、基本は:
(a) 皮と豆の分離(最初から分離しない手法もある)
(b) 豆の洗浄・乾燥・発酵(表面のヌルヌルを洗浄しない手法もある)
(c) 豆の脱穀・発酵
(d) 焙煎
以上のどの作業でも大変時間がかかり、半日どころか一日でも足りないくらいです。しかも個人のお客様対象にこれらの作業を少量の豆でも可能にする機材や道具はあるのか?という課題もありました。
そこで、あくまでも私が沖縄北部でお伺いした話ですが、一人変わり者のスタッフが役所にいました。その方とコーヒー生産者たちの試行錯誤によってようやく今の 3 〜 4時間体験コースが可能となったそうです。
コーヒーチェリー狩り自体は 1時間くらいまで、そこから下記の写真にもあるようにお客様に素手で皮と豆の分離をしていただく、これは 20 〜 30分ほどです。それを済ましたらザルで水流して軽く豆の表面のヌルヌルを洗い流します。これは 5分ほどです。
日英・日中・英中通訳|珈琲栽培:皮と豆の分離 |
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随行通訳|珈琲栽培:コーヒー収穫・焙煎体験コース |
沖縄|珈琲収穫・焙煎体験:脱穀機の使用 |
沖縄|焙煎体験:自分で収穫した豆を焼く |
焼く道具も色々あるが、基本アウトドアや家庭用のコンロに上記の写真に写っている小さな鍋かフライパンに鉄網を蓋にして適宜に揺らしたり回したりしてなるだけ均等に熱が豆に行き渡るようにして焼きます。焦げやすいので本当に気をつけないといけません。弱火すぎると時間がかかりすぎだし、普段 BBQ や料理をしていない人にはちょっと難しいかもしれません。
沖縄では収穫したコーヒーチェリーを無駄なく全部使おうとするので、向いた皮を乾燥してお茶にしたりします。しかし注意すべきなのは、これは何も工夫せずにただ乾燥してお湯を淹れるだけだと正直あまり風味は良くありません。発酵やら加熱処理やら何かとひと手間を加える必要がある印象でした。
商談通訳|珈琲栽培:コーヒーチェリーの乾燥した皮がお茶に |
一般的に焙煎士はコーヒーの木や生態、栽培のことをよく知らない方も多いので、目からウロコの体験に間違いありません。そしてプロの焙煎士や珈琲業界の関係者に限らず、コーヒーに興味がある方なら何方にも非常に勉強になります。
また、このとりたて、焼きたて、淹れたてのコーヒーは腕とは関係なく不味くなることはまずありません!もう、どこでどうやっても(焦げさえしなければ)美味しい!のです。コーヒーが苦手な方(女性が多い)は特にこれを機にコーヒーが飲めるようになったという話も伺いました。是非、一度トライして見てください。
[ コーヒー好きな方へ:ご参考に ]
沖縄の珈琲栽培(2020年記事まとめ)や 珈琲道具アレコレ(2020年記事まとめ)など、他のコーヒー関連記事やレポートの抄録を別途に note の「珈琲の棚」というマガジンに保管しております。宜しければどうぞ、そちらもお気軽にご参照ください。