ビジネス通訳:通訳屋の珈琲備忘録(テイスティングノート)
モカマタリ(ジュピター)
<生豆産国>
イエメン
<製造者>
ジュピターコーヒー株式会社
<豆と味の特徴・水温>
開封してすぐに鼻についたのは発酵の、芳醇の香り。何より独特なのは、店舗の紹介文にも書いてあるように「赤ワインのような」ものである。何度か淹れ方を変えてみて味わってみたら、これはワイン製造における「樽の香り」の類を確信した。
それ以外にもワインによくみられる複雑の香りと味わいは、このコーヒー豆を「赤ワイン」っぽくした理由。たとえば、豆を口に入れて噛んでみたら果実の甘みをはじめ、爽やかなシトラス、そして最後はナッツの香ばしさや苦味とコクも。まさに香りも味も、ワインらしいものが多かった。
焙煎度合いは発酵が進んでいるけれど、どっしりとした深煎りというわけではなく、中寄りの深煎りといった印象。
淹れてみると味はやはり複雑でしかも「濃縮」された感があってパワフル。通常より少なめの量でも同じ濃さを抽出できる感じであった。ただ、複雑な味である故に扱いにくい(淹れにくい)豆ではある。ドリップコーヒーにおいて少々腕や経験値が必要な豆である。最善の淹れ方を見つけるまで何回か実験が必要である。
ミルクが合わないことはないが、ストレートの方がよりこの豆の特徴が存分に引き出される。甘いものとも合うのだが、特に果実系(リンゴなど)やチョコレートなど合う。ケニアAA や ジュピターブレンドより合わす食べ物を少し選ぶ豆である。
この豆は、あまり高温でのドリップは向いていない。複雑さがバラバラと角を立ててまとまりにくくなる。88度まで下がれば、酸味は消えるが、複雑さを残しつつ果実味もあり、両方まとまった感じで楽しめる。それに樽の特徴とスモーキーさもまだ強い。基本、この豆に関しては水温を下げれば下げるほど花の蜜や香りなどの複雑さが引き出せるようになり、多面性がくっきりとなる。
実は、一度 80度以下まで水温を下げて淹れてみたら、上記の花の蜜や複雑の個性全てがくっきり、かつまろやかにまとまった。しかも、酒酔いに感じるツンとしたスモーキーさもなくなり、他の個性と丸くブレンドするようになった。やはり、この豆は低い温度が良い。
モカマタリ(ジュピター):豆と味の特徴・水温 |
<豆挽き目安>
中挽きくらいが適宜。また、水温に合わせて調整すれば GOOD。※ 深煎りは粗挽きという説はあるが、この豆は味が濃くパワフルで、個性も多いのだが、そこまで深煎りというものではないので複雑さを引き出すためにも、あまり粗挽きしない方が良い。その分、水温を下げよう。
<淹れ方と道具>
複雑で多面性のある味を持っている故に、クリーンな味を出すにもやはり、デフォルトの円錐形ドリッパー(例:ハリオ HARIO)で抽出するのが良い。一気に大量に水を淹れて抽出するよりもしっかりと蒸らしてからじっくりゆっくり何回か分けて時間をかけてドリップした方がもっとも美味しい。
<値段・コスパ>
1,478円(200g・税込)なので、いつもより贅沢なコーヒーとなる。個人的な見解になるかもしれないが、この豆の品質でこの値段は安い方だと思われる。同じくらいの値段やこれより高い商品でもこれをはるかに超えた品質は少ないと思われる。もちろん、倍の値段だったら明らかにもっと高級な品質のものもあるだろう。けれど、普段のテーブルコーヒーから少し個性的で良い豆!とランクアップしたい時、もしくはドリップコーヒー初心者からもう少し複雑なコーヒーで腕を試したい時、これはとてもいいチョイスだと言えよう。
[ コーヒー好きな方へ:ご参考に ]
珈琲道具アレコレ(2020年記事まとめ)や、沖縄の珈琲栽培(2020年記事まとめ)など、他のコーヒー関連記事やレポートの抄録を別途に note の「珈琲の棚」というマガジンに保管しております。宜しければどうぞ、そちらもお気軽にご参照ください。
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