ビジネス通訳|日英中トリリンガル:会議・交流・経営・戦略
私は過去 20年間の社会人歴で外資企業に勤めたのはこの一社のみなので、米国だからこうなるのか分からないが、どうも「自分の国でいけた商品ならば、全世界通用するはず」という概念は根強いのです。台湾出身で 13歳にオーストラリアに移住し、人生の三分の二が異国で生活している私にとってはとても遠い発想です。
それでも、同じ米国の競合社が同じアジアで必死に漕いているのを見て、また日本法人が直販を始めても一向に日本のシェアを伸ばせないのを見て、考え方や戦略の見直しを(重い腰をあげながら)行っていました。
本社の要人たちの都合や製品開発の時期にもよりますが、基本日本の医師が一堂に集まる全国学会などに合わせて来日します。メーカーや製薬会社はブースを出すので、自社ブースの中で面談室を設けて学会期間中に現地法人の営業担当やマネージャーたちがリストアップした日本のユーザー(医師)達と会談します。
その会話のやりとりに何度も立ち会い、随行通訳や商談通訳もさせていただきましたが、いつも思うのは日本の医師はエンジニア感覚を持っている方が多いのと、手先が器用のと、物作り目線はニッチなところ(要求は細かい)です。グローバル企業としてはそういったエンドユーザーの細かな目線と価値観をどうグローバルのビジネスチャンスに転換していくのかが仕事で、役目だと私は思います。
ここでまず一番よくある相互のズレは一つ、エンドユーザー(医師)の方は絶対自分のフィードバックがベスト(世間に貢献できるもの)で誰もが思いついていなく、そして完成したら全世界の需要があるはずだという感覚を持っている一方、大半のフィードバックは個人的に気に入らない部分に基づいた、いわゆる製品のマイナーチェンジです。
それに対して企業側はそれがすでに他の企業もしくは自社内でトライアル済みなもので、製品開発としてはコスパが非現実的で代わりの案を模索する必要があるなどの説明ができていないのと、マイナーチェンジに当たるフィードバックにおける、既存品の中から勧められる代用品があるかどうか、もしくは別の使用法の提案力を持ていないところです。
もう一つのズレは、企業側はこういう面談においてユーザーの顔を見て市場の水温、方向、および自社製品のアピールと顧客との親近感(関係構築)を作るのが目的(のはず)であるにも関わらず、会談前の準備、相手へのブリーフィングと会談後のフォロー(相手が何を期待すればいいのかの情報提供)を周到に整える企業はほとんどないというところです。
その状況を作ってしまう理由はグローバル会社なのに、組織体制はグローバルじゃない時に生じるのです。もしくは社内では組織の縦と横がうまく繋げず機能していない時です。これについてはまた別の機会で体験談を共有いたします。
通訳として入るならば、ただ言葉の変換ではなく、どうしたらこのコミュニケーションの場を最大限に活かして結果を出せるのかと、強く思うのです。したがって、私は原則として翻訳会社の仲介を通さず、直接に通訳を必要としている方々をクライアントとして事前にヒアリングしながら日英・日中・英中通訳サービスをご提供させていただくことにこだわります。
まして、ほとんどの商談やビジネス関係は一度にならず、工夫や会話を重ねて作られていくものなので、確実に毎回の結果を出しながら堅実な関係を作っていただきたい所存です。