ビジネス通訳|日英中(台湾)逐次通訳:商談・交渉
内視鏡処置具を取り扱う業界に 11年間ほど勤めてきましたが、そのうち 4年間ほど米国メーカーの日本専属販売店(独占契約代理店)の営業本部でマーケティング・アシスタント的な仕事をさせていただきました。
最初のタスクは、当時最も大きな課題となっていた、日本代理店と米国メーカーのコミュニケーションの改善でした。
しかし、入社当時は米国メーカーとのやりとりに自分専用のメルアドすら与えてもらえず、全部(しかも)別部署の総務の責任者を通してその方の名義でしかメールを出させてもらえませんでした。また、米国メーカーからの回答も、それまでの関係性からの習慣か、1週間以上などかかることもしばしばでした。
要するに、それまで両社のやりとりはデジタルメールにも関わらず、一つの議題におけるやりとりの応答は平均、2週間ほどのスパンが必要でした。
学会期間に合わせて米国の社長が来日され、日本代理店の社長や役員との会議を設けられた時は日英・英日通訳者として同席させていただきました。
ただでさえ文化が違い、立場(メーカーと代理店)も違い、その上異なる会社なので、話が噛み合わず、落ち合うところがない、という局面になりやすかったのです。
それでも下記のようないくつのパターンで落ち合わない理由をまとめられるのではないかと思います。
(1) 日本の代理店は他にも扱っている商品(メーカー)があり(たとえライバル社でなくても)、マンパワーやリソースを全部この米国一社に注げるわけにはいかない(注げたくない)。
(2) 米国メーカーは、同じ米国ライバル社の製品が日本市場でどんどん伸びるのにも関わらず、自分の製品は日本だけ何十年経っても市場シェアが変わらず伸びないことに焦りと日本代理店に対する不信感が生じる。
(3) 日本代理店に対して不信感が生じていも、日本市場に対する情報(理解)を日本代理店しか収集できない米国メーカーであったため、結局どんな問題をどう解決するのか、メーカーとしての提案力が限られてくる。が、自らグローバルの会社として日本代理店より優れた情報を入手できないまま、結局代理店を制御する手段が広がらない。
(4) 日本の代理店はガツガツと市場シェアを広げたい気持ちは薄く、家族経営(ファミリービジネス)体制のマイナス部分が出て、社員をはじめ会社を自分と切り離した独立した組織として成長させていくように運営されていない。その結果、自然に「これまでのやり方」や「自分たちにとって楽な方」という回転モードに落ち着いてしまう。
(5) 「自分たちにとって楽な方」が進んでいるうち、当事者意識が薄れ、積極的にリスクをとって何かを失う前提で行動したりしなくなるため、日本代理店じゃなくてもどちらかの一社がそうなった場合は、自然に商談と交渉の場面に建設的なやりとりを阻む壁となって現れます。
たとえば日本代理店の方は対策なしでただ仕入れ値について不平不満を言い付けてきたりしてしまい、自分たちがこんなリスクを背負うから代わりにこれをお願いしますなどの話はせず、米国メーカーからタダで何かをしてもらえるものや、与えてくれるメリットなどばかりに注目してお互いもっと先の全体的なビジョンを共に構築するような話を詰められない会議が繰り返される悪循環になったりします。
今思えば、お互い「メーカー」と「代理店」の役割を今一度明確に定義・位置付けし直し、共有する最終ゴールを作り、それに向かっての逆算的な中短期目標と対策を立て、アクションプランの中身を練り、それに必要な情報(不足の分も含め)収集すればよかったのですが、何十年も共にやってきた両社ならば、なかなか盲点が見えず、習慣から脱出するのは本当に難しかったのでしょう。
当時 4年間にわたり、何度も板挟みの想いでこの日本代理店と米国メーカーの商談と交渉の場にコミュニケーターとして英語通訳を担当してきた経験から言えば、商談&交渉における最も注意すべきことは
(ァ) まず、相手とどんな関係を構築していきたいのか。
(ィ) 噛み合わない、落ち合わなくなった時に、まず「目先」の課題を一旦忘れよう。
(ゥ) 相手とどんな最終ゴールを迎えたいのか(目先のもの以外に)
(ェ) 相手を信頼しているか
そして
(ォ) もし目先のゴール以外何もなく、相手も信用していないならば、両社の取引を終わりにするように持っていった方がいいでしょう。一旦終わりにし、別のビジネスにエネルギーを割いて、またご縁があった時にパートナーシップを結べばいいと言えましょう。
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