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通訳の落し穴:「事前会計制」は「PRE-PAID」ではない


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近年、観光地でない場所でも外国人が多く入るようになり、飲食店も合わせて英語や中国語、韓国語などの表記がよく見られるようになりました。

日本語の中に「外来語」という言葉があるように、今では当たり前のように日本語の一部として認識されているのだが、もともと外国語というものです。しかも、日本の「外来語」となる過程においては本来の言葉を略されたり「和製」言葉だったりするものも多いのです。

その背景もあって日本の皆さんが外来語のつもりでなくて例えばある英語を和訳にしようと試みた時に「いかにもそれっぽい正しい訳」のように見えても意外とそれこそ「知らずに和製英語を自作」してしまっているところはあります。

その一つの例が、最近飲食店でよく見られる「事前会計制」を英語に変換しようとした表記です。下記の写真にありますように、多くはこれを「PRE-PAID」と訳しているのだが、実は、これはとんでもない間違いです。何故ならば、全く違う意味で、本質的に全く違う内容だからです。

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通訳の落し穴:「事前会計制」は「PRE-PAID」ではない

PRE-PAID」という英語の言葉は、実は「発注・購入という行為が発生する以前に、あらかじめ入金したお金や決済行為」のことを指しているのです。すなわち、テレホンカードや電車などで使われる ICOCA のスマートカードは「PRE-PAID」式と言えています。一方、日本語での「事前会計制」という言葉は「何かの品物やサービスを発注・購入した。そして、その物が渡されたり提供されたりする前にお支払いをする」制度として使われいるのです。

更に言えば、ICOCA やテレホンカードなどを「事前会計制」と日本語で言われても「言いたいことは分かるが、ICOCA の制度を事前会計といったら何か違和感があるな」のではないでしょうか。そして、この場合はおそらく日本語でも「事前会計制」よりも「外来語」としての「プリペード」という片仮名の言葉を皆さんが使って ICOCA やテレホンカードの決済スタイルを説明するのではないでしょうか。

「事前会計制」は「PRE-PAID」ではない、というのはまさにそのような違和感で違いです。

ポイントは「発注・購入という行為の発生」となります。「事前会計制」というのは発注・購入が決まってからの会計に対して「PRE-PAID」は「いつ発注・購入するのかまだ未定」のものにおいて予めお金を入れて貯めておく制度です(そしてこの場合、実際の会計は発注・購入し、請求された時点でその金額がアカウントから引き落とされます)。

では、何故このような間違いが出てくるのでしょうか?

一つは、先述させていただいたように日本には「和製英語」という歴史長く根深い言葉の文化背景にあります。もともと日本人は英語の扱いが不慣れの方が多く、更に間際らしい「和製英語」が氾濫している環境の中では、ますます「それっぽい英語」と「本当の(正しい)英語」の分別が難しくなっていくわけです。

二つは、「翻訳」することとを「直訳」と勘違いている方は大勢にいるからです。昨今のオンライン翻訳アプリも一役買っているが、もともとどこか翻訳の作業をただ「機械的な言葉の変換」とイメージしてしまっている方は多いのです

しかし、実際のところ、特に外国語を勉強している方ならば実体験でわかると思いますが「言葉(言語)」というのは「文化・社会・歴史」が元になっているのです。それはどういうことかと言いますと「一つの言葉にシチュエーションごとに、地域別に、時代別に意味合いや使い方が変わる」という生き物のような存在であることです。国が変われば更に前後が逆になったり言葉自体が存在しなかったりするケースも珍しくありません。

では、飲食店でよく見かける「事前会計制」のサインは、本当は英語圏でどう表記されているのか、見てみましょう。まず、先ほどお話しした「発注・購入という行為の発生」を元に「PAY AS YOU ORDER」という英語をグーグルで画像検索してみましょう。

ほら、色々出てきたのではないでしょうか。リストアップしてみましょう(それぞれの文章の直訳を後につけています)。

Pay as you order」(オーダーの際にお支払いください)
Pay as you go」(レジやオーダーポイントから離れる前にお支払いください)
Please pay first」(先払いしてください)
Please order and pay here」(ここでオーダー&お支払いしてください)
Please pay when ordering」(オーダーの際にお支払いください)
Place order here. Pay here. Thank you.」(ここでオーダー&お支払いしてください)

唯一、意味が少し違うのがこれです。

Please pay when served」(注文したものを渡された際にお支払いください)※ これは、オーダーの際ではなく、渡された際です。

言葉はただの機械的なものだったら、誰も面白がることもなく関心を持たれることもないのでしょう。SNSなどでますます言語が薄ぺらになり、温度が失われていく世の中ですが、仏教の教えにもあるように形を成していく三大要素は「Body(体)」「Speech(言葉)」「Mind(心)」であり、キリスト教で言われているように全てが「言葉」から始まった如く、言葉はとても大事な位置付けにあります。

今だからこそ、人々は何を「発し」て言葉をどう「扱う」のか、学び磨いていくタイミングだと言えましょう。

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Brenda Chen